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なぜ辞める?離職防止のための5つのアイデア!取り組み事例や対策のポイントも

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離職者が目立つ企業では、「なぜ辞めるのだろう?」「どうしたら長く働いてもらえるのだろう?」と疑問をもつ人事・労務の担当者も多いのではないでしょうか。

離職者が増えると他の従業員への負担が増加するため、早めに対策を講じる必要があります。そこで本記事では、離職する原因について厚生労働省のデータをもとに説明し、各対策のポイントについて解説。離職防止のための具体的なアイデアや成功事例も紹介します。

離職防止対策が重要視される理由

離職を防止すべき理由は、離職者が担当していた業務をフォローするために他の従業員の残業時間が増加したり、休暇取得数が減少したりして勤務状況が悪化する可能性があるためです。また、日本の労働人口は年々減少しており、少子高齢化に伴い今後もますます人材確保が難しくなっていくと考えられています。

厚生労働省の調査によると、人手不足が職場環境へ影響を及ぼしていると感じる「企業」の割合は73.6%、「働く方全体(正社員)」の割合は77.5%でした。
企業と労働者ともに高い水準ですが、企業が認識している以上に労働者は人手不足による影響を感じていることが分かります。

	人手不足が職場環境へ影響を及ぼしていると感じる割合
※厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」を元に作図

具体的な人手不足が及ぼす影響としては、企業と労働者ともに「残業時間の増加、休暇取得数の減少」が最も多くあげられています。また「従業員の働きがいや意欲の低下」は、企業よりも労働者の方が影響が大きいと感じており、労使間でのギャップが最も大きい結果となっています。

離職する原因と対策のポイント

離職する原因と対策のポイント

令和4年雇用動向調査結果の概況をもとに、離職する原因として多いものから順に3つ挙げると次の通りです。(「定年・契約期間の満了」や「その他の理由」を除く)

1.労働時間や休日についての不満
2.職場の人間関係への不満
3.給与に対する不満

    ここでは、以上の対策について順に解説します。

    労働時間や休日についての不満

    離職する原因として多くあがる理由が労働時間や休日についての不満です。

    前提として、時間外労働や休日労働をさせる場合には、労働基準法第36協定に基づく労使協定(36協定)の締結と、所轄労働基準監督署長への届け出が必要です。時間外労働の上限は月45時間・年360時間、かつ月45時間を超えられるのは年間6か月までとなっています。
    36協定を最低限遵守した上でフレックスタイム制を取り入れたり、年次有給休暇の取得を推奨したりして休みやすい環境を整えるとよいでしょう。

    無駄な残業を発生させないためには、業務の効率化や、定時で帰りやすい職場の雰囲気づくりも求められます。仕事以外のプライベートの時間を充実させることで、従業員のエンゲージメントが高まり離職を防止します。

    職場の人間関係への不満

    職場の人間関係への不満については、特に上司と部下の人間関係に課題を抱えることが多いようです。
    Chatwork株式会社が行った調査によると、上司と部下とのコミュニケーションに課題を感じていると回答した人の割合が60%を超えました。(「とても感じている」「少し感じている」の割合を合計)

    職場の人間関係の悪化は、従業員がストレスを抱えメンタル不調の原因にもつながるため、早めの対策が必要です。上司と部下が定期的に気軽な話をできる場を設けたり、ストレスと上手く付き合う方法について研修を実施したりするのがおすすめです。

    参考:2023年「上司・部下のコミュニケーション」に関するアンケート調査(Chatwork株式会社)|PR TIMES

    管理監督者による部下への接し方として重要な「ラインによるケア」と、従業員が自身のストレスに適切な対処をするための「セルフケア」について解説します。

    ラインによるケア

    管理監督者が部下の健康管理について把握してケアすることを「ラインによるケア」といいます。
    勤怠が悪くなる、業務効率が悪くなるなどの「いつもと違う」部下の様子にいち早く気づき、積極的に話を聞いたり、産業医の元へ相談に向かわせたりすることが必要です。日頃から部下に関心を持って接し、部下の話を傾聴する技術を習得しましょう。

    参考:ラインによるケアとしての取組み内容|厚生労働省

    セルフケア

    従業員が自身のストレスに気づき、適切に対処するための知識や方法を身に着け実施することを「セルフケア」といいます。
    ストレスと上手につき合うためには、心身の緊張を緩めるリラクセーションや、筋肉の緊張を緩めるストレッチなどが有効です。また相談の窓口は親しい人だけでなく、事業場内の専門家、地域の医療機関や保健所などたくさんあることを従業員に周知しておきましょう。

    参考:e-ラーニングで学ぶ 15分でわかるセルフケア|こころの耳

    給与に対する不満

    中小企業庁の調べによると、中小企業・小規模事業者が人材定着において最も有効的な取組みと回答したのは「賃金の向上」でした。
    70.8%の企業が賃金の向上が人材定着に効果があると回答しているため、賃金アップは離職防止には欠かせない施策の1つと考えられます。

    参考:中小企業白書|中小企業庁

    離職防止に役立つ5つのアイデア

    離職防止に役立つ5つのアイデア

    離職防止に役立つアイデアについて、次の5つを紹介します。

    1.短時間正社員制度の導入
    2.1on1ミーティングの実施
    3.産業医の選任
    4.メンタルヘルス不調者への対応
    5.離職防止ツールの導入

      各項目について詳しく解説します。

      短時間正社員制度の導入

      短時間正社員制度とは、勤務時間や勤務日数を短縮しても正社員として働ける仕組みです。

      ・期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
      ・時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等がフルタイム正社員と同等
      引用:「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル|厚生労働省

      育児や介護などのプライベートと仕事を両立したい場合や、キャリアアップを目指すパートタイム労働者を正社員として雇用する場合などに利用されます。短時間正社員制度を導入することで、妊娠や出産、育児を理由に離職する人材を減らせるでしょう。

      1on1ミーティングの実施

      1on1ミーティングとは、部下の育成やモチベーションの向上を目的に上司と部下の1対1で定期的に開かれる個人面談です。上司からの一方的な指導ではなく、対話型のコミュニケーションを取るため、上司と部下との間に良好な人間関係を築く効果が期待できます。

      リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、実際に1on1ミーティングで上司と部下の関係が良くなったと回答した企業は40.9%に上りました。

      参考:1on1 ミーティング導入の実態調査|リクルートマネジメントソリューションズ

      産業医の選任

      50名以上の従業員が働く事業所では産業医の選任が義務づけられています。しかし、それに満たない事業所でも産業医を選任することで離職防止が期待できます。

      昨今はメンタルヘルス不調者が休職する事例が増えており、日本企業の約10%がメンタルヘルス不調による休職者を抱えていると報告されています。

       参考:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

      休職者の一部は、メンタルヘルス不調が回復せずにそのまま離職するケースもあります。産業医を選任して専門的な知見からメンタルヘルス不調を予防したり、復職をサポートしたりすることで、離職防止に繋がります。

      メンタルヘルス不調者への対応

      ストレスチェックは50人以上の事業所で実施するように労働安全衛生法で義務付けられていますが、従業員がメンタルヘルス不調となることを未然に防止するためには、事業所の人数に関わらず実施することが望ましいです。

      離職防止ツールの導入

      前述のストレスチェックの他にも、仕事へのエンゲージメントの可視化や退職原因の分析、モチベーションアップのための仕組み作りなど、従業員の離職防止に役立つさまざまなツールがあります。

      離職防止ツールには大きく分けて2つのタイプがあり、1つ目は、業務負荷や人間関係の軋轢などが原因で起こるストレスに対するコンディションケアに特化したタイプです。2つ目は、従業員同士のコミュニケーションを活発化させることで職場の雰囲気を良好に保つ、モチベーション向上に特化したタイプです。

      自社の課題に適した離職防止ツールを導入することで、安心して長く働きたいと思える職場づくりを実現することができます。

      離職率改善につながった企業の取り組み事例2選

      離職率改善につながった企業の取り組み事例3選

      ここでは、離職率改善につながった企業の取り組みについて下記の2つの事例を紹介します。

      • アサヒビール株式会社:短時間正社員制度の導入で多様な働き方を推進
      • サイボウズ株式会社:ワークスタイルの変革をきっかけに離職率が大幅に減少

      各事例について詳しく解説するので、参考にしてください。

      アサヒビール株式会社:短時間正社員制度の導入で多様な働き方を推進

      アサヒビールでは、従業員が働きながら育児や介護、資格取得をできる職場を目指して短時間正社員制度の拡充を図りました。さらに早期退職者がセカンドライフへの準備期間として短時間正社員制度を利用できる体制を導入しています。

      全社員が短時間正社員制度の対象者で、通常の所定労働時間である7時間30分に対して最大で2時間の短縮が可能です。制度を導入したことで従業員が安心して働けるようになり、低い離職率を保っています。

      参考: 多様な正社員制度の導入事例|厚生労働省

      サイボウズ株式会社:ワークスタイルの変革をきっかけに離職率が大幅に減少

      サイボウズ株式会社はワークスタイルの変革に取り組んで、離職率28%から3%前後まで改善しました。

      ワークスタイル変革の一環として、従業員がライフステージに応じて勤務時間や場所を自由に決められる働き方宣言制度を導入。
      さらに、働き方宣言制度で宣言した以外の働き方を単発でできるウルトラワーク制度を開始。家庭の事情などに合わせて総労働時間のうち10%程度を在宅勤務に切り替えたり、時差出勤できたりします。

      他にも育児・介護休暇制度や子連れ出勤制度を導入したり、副業を許可したりしてワークスタイルの変革に取り組みました。

      参考:多様な働き方へのチャレンジ|サイボウズ株式会社

      産業保健活動が離職防止のカギ!安心して長く働ける会社を目指すために

      メンタルヘルス不調者が増加すると、精神面に不安を抱えた従業員の休職や退職が目立つ状況に陥る可能性があります。安心して長く働ける企業を目指すためにも、産業医を選任したり、メンタルヘルスチェック後の集団分析や、その後の職場改善施策の実施など 、産業保健活動を推進することが大切です。

      他にも従業員のライフスタイルに合わせた働き方を選択できる体制を整えると、仕事とプライベートの両立による負担を軽減できます。また人間関係によるストレスを抱えないように、1on1ミーティングを開いて上司と部下の関係性を良好に維持すると離職防止に繋がるでしょう。