職場環境を改善するためのアイデアを6つ紹介!好事例、改善までの手順も解説
労働安全衛生法では職場環境の改善は企業の努力義務とされています。また昨今はメンタルヘルス不調者が増加傾向にあり、多くの企業が職場環境改善を進めています。
しかし、ひとくちに職場環境改善といっても、その内容は多岐にわたるため、具体的な進め方に不安を抱える担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、職場環境改善のアイデアを6つ紹介。改善のメリットや具体的な手順、好事例も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
職場環境を改善するメリット
職場環境が示す意味合いは幅広く、照明や空調などの室内環境だけではなく、上司や事業所内の人間関係など、従業員を取り巻く環境全般を指します。
職場環境を改善すると、次のメリットがあります。
・従業員満足度の向上
・職場内における人間関係の改善
・メンタルヘルス不調の減少
・プレゼンティーズムやアブセンティーズムの改善
まずは職場環境を実施する意義を見ていきましょう。
従業員満足度の向上
職場環境は従業員満足度を構成する要素の1つです。そのため職場環境を改善すると、従業員満足度の向上につながり、生産性の向上や離職率低下、業績アップが期待できます。
一方で職場環境が悪いと、従業員が心身に不調を抱えやすく、休職や離職にもつながります。職場環境の改善で、ストレスを抱えにくい職場を目指しましょう。
職場内における人間関係の改善
職場環境の改善に取り組むと、部署やチーム内における上司や同僚間のコミュニケーションを円滑にし、人間関係の改善が期待できます。
人間関係を改善させる施策として、上司との1on1の機会を設けて個別に仕事について相談できる環境を整えることが考えられます。また社内イベントを企画して、同僚同士のつながりを深めるきっかけを作るのもよいでしょう。
メンタルヘルス不調の減少
メンタルヘルス不調を減らしたい場合、まずは仕事の量や質の適正化を図るとよいでしょう。厚生労働省の調べでは、54.2%の人が仕事でストレスを感じると回答。なかでも、仕事の量や質に対してストレスを抱えている人が最も多いことがわかりました。
※厚生労働省「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」を元に作図
仕事でストレスを感じる人のうち、56.7%が仕事の質や量でストレスを感じています。そのため、メンタルヘルス不調を減らすために職場環境を改善する場合は、仕事の量や質の適正化を図るのも有効手段の1つです。
従業員の仕事内容を可視化すると、仕事の量や質の適正化を図れます。仕事量の少ない従業員と仕事量の多い従業員がわかり、一部の従業員に偏ることなく、均等に仕事量を配分しやすくなります。
プレゼンティーズムやアブセンティーズムの改善
プレゼンティーズムとは体の不調を抱えながら仕事をしている状態で、アブセンティーズムは病気を抱えて仕事を休んでいる状態をさします。
従業員の健康意識を高めたり、従業員の健康をサポートするような福利厚生を充実させたりして職場環境の改善を図ると、プレゼンティーズムやアブセンティーズムの改善が期待できます。
職場環境を改善するための6つのアイデア
職場環境を改善するためのアイデアとして、次の6つを紹介します。
・仕事をしやすい環境づくり
・DX化の推進
・コミュニケーションの円滑化
・産業医の積極的活用
・ストレスチェックの活用
・アクションチェックリストの活用
それぞれについて詳しく解説するので、職場環境を改善するためのヒントにしてください。
仕事をしやすい環境づくり
仕事をしやすい環境とは、適切な温度や湿度が保たれたなかで、衛生的な状態で仕事をできる環境を指します。
空調設備を整えたり、空気清浄機でダストや臭い対策を行ったりして快適な職場環境を整えましょう。劣悪な環境で仕事をすると、従業員に与えるストレスも大きくなるため、環境面への配慮は重要です。
DX化の推進
社内のDX化を進めると、さまざまな雑務を自動化できるため、業務の効率化と従業員への業務負担の軽減が可能です。
DX化の取り組みとして、具体的には以下の内容が考えられます。
・書類のペーパーレス化
・チャットツールの導入
・経費精算や入退社
・勤怠管理のシステム化
・オペレーターサービスの効率化
・業務のリモートワーク化(従業員の通勤負担の抑制)
・社内ポータルサイトの開設
・生産ラインの一部を遠隔管理 など
以上のDX化に取り組むと、管理業務の効率化やコミュニケーションの円滑化につながり、従業員の仕事に対する負担が軽減します。
コミュニケーションの円滑化
部下が上司に対して相談しやすい職場環境を整えたり、先述のDX化にもある「チャットツール」や「社内ポータルサイト」を導入したりすると、従業員同士のコミュニケーションを円滑化できます。
意見交換をしやすい環境が醸成され、意見の食い違いによる無用な衝突や職場内での孤立化などの予防が期待できます。部署間の垣根を超えた、懇親会や研修会の開催が活発化することも、社内のチームワークの強化に役立ちます。
産業医の積極的活用
産業医とは、労働者の健康管理などについて専門的な立場からアドバイスを行う医師です。労働安全衛生法によると、労働者数50人以上の事業場では、産業医の選任が義務化されています。
また50人未満の小規模事業者の場合は、従業員の健康管理について医師に依頼することが努力義務とされています。
産業医を積極的に活用すると、従業員への健康診断の結果を職場環境の改善に効果的に役立てたり、増加傾向にあるメンタルヘルス不調者の休復職をサポートする体制を整えたりできます。産業医は、職場環境を改善するために欠かせない存在ともいえるでしょう。
ストレスチェックの活用
メンタルヘルス不調を予防するためには、ストレスチェックの結果を職場環境の改善に役立てることが大切です。
ストレスチェックの結果を分析して、効果的に職場環境の改善がなされているのかをチェックしましょう。過去のデータ推移が改善傾向にあれば、職場環境の改善が進んでいることになります。
産業医や保健師などの専門職からの意見を取り入れると、より効果的に職場環境の改善を勧められます。
アクションチェックリストの活用
アクションチェックリストとは、厚生労働省が発行する資料に掲載された職場環境改善に役立つチェックリストです。
従業員が職場環境に関連した項目について、「対策が必要かどうか?(「はい」もしくは「いいえ」で回答)」に答えるようになっています。具体的には、次の4つが基本項目として設定されています。
・仕事のすすめ方
・作業場環境
・職場の人間関係・相互支援
・安心できる職場のしくみ
以上の他にも、追加項目を設定して会社それぞれで独自のチェックリストを作成できます。アクションチェックリストについては、次の資料の10ページ目からご覧になれます。
リンク:いきいき職場づくりのための(参加型)職場環境改善の手引き
職場環境を改善する手順
職場環境を改善するには、次の手順を踏むとよいでしょう。
1.準備と計画
2.ディスカッション
3.改善計画の作成と実施
4.成果報告と発表
各手順について、わかりやすく解説します。
準備と計画
まずは、職場環境の方針や取り組みを進めるための体制を整えます。
そのためにも、職場環境のメリットや注意事項を経営者に説明して、承諾を得ましょう。
経営者の承諾を得たら、必要に応じて職場環境の改善に取り組んだ経験のある外部支援者のサポートを受けるのも有効です。
外部支援者として、産業保健総合支援センターやストレスチェックの委託先、産業保健の専門家などが考えられます。
職場環境のメリットの伝え方
メリットについては、先述した「職場環境を改善するメリット」の内容を伝えるとよいでしょう。
他にも労働安全衛生法を遵守するコンプライアンス上の観点から、職場環境改善の必要性を説明するのも有効です。
事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計
画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置
注意事項の伝え方
職場環境改善を進めるにあたり、事前に下記の注意条項や留意点を経営者に伝えておきましょう。
短時間で行う
・外部協力者は必要な場合に限る
・年度計画に組み込む
・別途予算が必要な場合は小さな改善から行う
・グループ討議(意見交換)は良い点から行う
ディスカッション
職場環境改善の計画を話し合うためのディスカッションを行いましょう。ディスカッションは職場ごとに行い、60分程度の短時間で済ませるようにします。
スケジュールは下記を参考にしてください。
1.説明(10分):配布資料の確認とディスカッションの進め方についての説明
2.個人ワーク(15分):アクションチェックリストへの記入
3.ディスカッション(25分):参加者それぞれが職場の良い点を3つ、改善点を3つ上げ、改善計画書を作成する
4.発表と総合討議(10分):良い点や改善点をまとめる
ディスカッションへの参加メンバーは5~6人程度とし、司会や書記などの役割も決めておくと、スムーズに進行できるでしょう。
改善計画の作成と実施
ディスカッションの結果を参考にして、改善計画を作成します。
その際に以下を意識すると、有効な職場環境の改善計画を作成できるでしょう。
・低コストかつ、すぐに実施できる具体的な改善策を考案する
・小さな改善でも業務に役立ったり、働きやすくなったりするのであれば、積極的に採用する
改善計画を実施する際には、特定の従業員に負担が集中しないように注意しましょう。安全衛生委員会やQCサークルなどの既存の仕組みを活かしながら、職場全体で効率的に改善計画を進めるようにしましょう。
成果報告と発表
職場環境改善の成果を発表する場を設ける際は、事前に改善計画・報告シートなどで報告内容を決めておくとスムーズに進められます。
良い改善を行った職場を表彰すると、職場環境改善を継続させるモチベーションを保てます。
職場環境改善の成果をチェックする方法として、ストレスチェックの結果を分析するのもおすすめです。分析結果を、今後の職場環境改善の方針を決める際に活かすようにしましょう。
職場環境の改善につながった好事例
職場環境の改善につながった好事例を3つ紹介します。
経営層の職場環境改善への合意を社内報でアピールした事例
ある事業場では、職場環境の改善をはじめるにあたり、事前にその内容を社内報に掲載。社内報を社長が読むことは社内で周知されているため、社内報に職場環境改善の内容が掲載されたことで、社長が取り組みに合意している点を従業員が認識できました。
通達という手間をかけずに、経営層の職場環境改善に対して合意している点をアピールでき、職場環境の改善計画がスムーズに進みました。
職場環境改善のモデル部署を設定した事例
職場環境改善の取り組みを導入する前に、先行して特定の部署が取り組みを体験して、その結果を会社全体で共有しました。先行して取り組んだ部署の担当者が、他の部署に助言をすることで、会社全体における職場環境の改善が円滑になりました。
産業医と連携して職場環境の改善に取り組んだ事例
職場環境を改善する場合、産業医などの専門職と連携するのもおすすめです。産業医と連携すると、メンタルヘルス不調者のよき相談窓口ができたり、EAP(従業員支援プログラム)の充実を図ったりできます。
メンタルヘルス不調の予防について課題のあった弊社クライアントの事例によると、産業医との連携でメンタルヘルス不調を抱えた従業員が気軽に相談できる窓口を設置でき、職場環境が改善されました。職場環境に関連する健康経営優良法人などの取得にもつながったとのことです。
職場環境の改善に取り組もう
職場環境の改善に取り組むと、従業員満足度の向上や職場内における人間関係の改善、メンタルヘルス不調の減少などさまざまな効果が期待できます。
今回は、職場環境を改善するためのアイデアや詳しい実施手順も解説しました。職場環境の改善に取り組む際は、参考にしてください。