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【感情労働】バーンアウトとは?従業員のストレスを溜めない方法を解説

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感情労働とは、受付や電話オペレーター、看護師などの対人サービスを主とする職種での労働を指します。顧客を気持ちよくさせるために自分の感情を抑制して働く労働であり、従業員にはストレスがかかることもあります。
ストレスが増大すると、バーンアウトにつながる恐れもあるため、企業として適切な対策が必要です。

本記事では、感情労働について、具体的な職種や向いている人、バーンアウトとの関連を解説します。感情労働の特徴を理解し、従業員のバーンアウトを防げるよう、適切なメンタルヘルスケアを推進していきましょう。

感情労働とは?

感情労働とは

感情労働の定義や具体的な職種、肉体労働・頭脳労働との違いについて解説します。

ホックシールドが提唱した概念

感情労働は、アメリカの社会学者であるホックシールドが提唱した概念です。職務の一部として本来の感情を抑制し、顧客にとって好ましい感情を表現する姿勢が求められる労働形態を指します。

ホックシールドは、客室乗務員への調査を通じて、感情労働は心理的な負担となり、精神的な変化をもたらすとしました。例えば、客室乗務員は乗客に対してあたかも仲の良い友人かのうように親切に接しなければならない一方で、乗客は乗務員に対して丁寧に応答する義務はありません。
このことが客室乗務員にとって心理的負担となってしまうのです。

また、感情労働には「表層演技」と「深層演技」の2つの振る舞いが求められるとされます。

表層演技

作り笑いや愛想笑いなど、自分の感情を抑制してその場にふさわしい別の感情を抱いているかのように身振りと外見の管理をすることです。本心とは別の感情を抱いているように振る舞うため、本来の感情との間に生じる葛藤がストレスになります。

深層演技

状況や職業的な観点からみて好ましい感情をあたかも本当に抱いているかのように、自分の心を管理することです。例えば、クレームに対して心から謝罪するなどの振る舞いです。心から抱いている感情なので葛藤は生じませんが、無意識のうちに疲弊する可能性があります。

参考:ホックシールド『管理される心─感情が商品になるとき』│日本労働研究雑誌

感情労働が求められる職種

感情労働が求められる職種は、以下のようにサービス業を中心とした職種です。顧客からのクレームを受けても、感情的に対応してはいけないため、ストレスがかかりやすいでしょう。

また、従業員の相談対応を行う社内の担当者も、複雑な心情に配慮した対応が求められるため、感情労働に含まれます。

職種例抱えやすい負担
客室乗務員
ホテルスタッフ
販売スタッフ
・顧客が親しみを感じられるような表情や振る舞いをしなければならない
・臨機応変な気配りが求められる
コールセンターのオペレーター
クレーム処理係
・顧客の要求に耐え、感情的になってはいけない
・電話という相手の姿がみえない中での対応が求められる
看護師・介護士・教員・患者や利用者に対して細やかな配慮が求められる
・感情的に不安定な相手の言動に耐える
社内の相談窓口担当
(ハラスメントなど)
・相談者の感情に共感しすぎてつらくなる
・心情に配慮した対応が求められる

肉体労働や頭脳労働との違い

感情労働は、肉体労働や頭脳労働と比べて疲れを自覚しにくく、休養してもすぐに回復しない点が異なります。

肉体労働は、筋肉痛や倦怠感などで疲労を自覚できます。頭脳労働も、目の疲れや頭がぼんやりするなどの自覚症状があります。どちらも身体をしっかり休めてよく眠ることで疲れがとれるケースが多いでしょう。

一方で、感情労働の疲れは自覚のしにくさが特徴です。特に、「深層演技」による行動や、感情労働にやりがいを感じている人は知らないうちに疲労が蓄積している可能性があります。また、一晩寝たり、リラックスしたりしても、すぐには回復しにくいのが特徴です。

企業は感情労働ならではの疲労の特徴を理解し対策を打っていく必要があります。

また、肉体労働でも顧客への細やかな配慮など、サービス業の要素を求められることが増えています。例えば、宅配便のドライバーなど、肉体労働とカテゴライズされている仕事も感情労働の側面を有する職種もあります。

従来は肉体労働や頭脳労働とされていた職種でも、感情労働の側面がないかを把握し、従業員への配慮を行いましょう。

感情労働によるバーンアウトとは?

感情労働によるバーンアウトとは

感情労働によるストレスが蓄積すると、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る可能性があります。バーンアウトがもたらす3つの変化と、企業に与えるデメリットについて解説します。

バーンアウトがもたらす3つの変化

バーンアウトは、業務に向けていた熱意が急になくなり、無気力な状態に陥る現象です。具体的には、以下の3つの変化が生じます。

1.情緒的消耗感

顧客や同僚に対して思いやりがなく、気持ちがこもっていない対応をしてしまう状態です。エネルギーを使い果たした結果、それ以上の消耗を避けるために生じる防衛反応と考えられています。具体的には、意欲低下や周囲への冷たい態度や悪口、責任転嫁などがみられます。

2.脱人格化

顧客や同僚に対して思いやりがなく、気持ちがこもっていない対応をしてしまう状態です。エネルギーを使い果たした結果、それ以上の消耗を避けるために生じる防衛反応と考えられています。具体的には、意欲低下や周囲への冷たい態度や悪口、責任転嫁などがみられます

3.個人的達成感の低下

消耗した状態で思いやりが持てなくなると、顧客対応やサービスの質が低下します。その結果、自信を失ってしまう状態が個人的達成感の低下です。仕事からやりがいや充実感を得られず、メンタルヘルス不調に陥るケースもあります。

バーンアウトが与える企業へのデメリット

感情労働によりエネルギーが消耗した結果、サービスの質の低下や従業員の休職、退職の増加などの問題が生じる可能性があります。

1.生産性やサービスの質の低下

感情労働は細やかな思いやりが求められますが、バーンアウトに陥った従業員が増加するとサービスの質が低下します。そして、顧客からのクレームが増大し、その対応に疲弊するといった悪循環に陥りかねません。
また、意欲が減退し、周囲への態度が冷たくなると、バーンアウトを起こした従業員だけでなく、職場の活気にも影響するでしょう。その結果、生産性の低下を招く可能性があります。

2.従業員の休職、退職の増加

バーンアウトの症状が重篤化すると、休職が必要な状態に陥る恐れがあります。休職しても、復帰すれば感情労働によるストレスに再びさらされ、再休職するケースもあるでしょう。結果として、退職を選択する従業員も生じ、人材の確保が難しくなってしまいます。

参考:バーンアウト (燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス│日本労働研究雑誌

感情労働に向いている人は?

感情労働に向いている人は?

感情労働はエネルギーが消耗しやすい職種といえますが、全ての人がバーンアウトのリスクがあるわけではありません。感情労働とバーンアウトの関連を検討した複数の研究では、結果が一致していないため、個人の特性によるところが大きいでしょう。

企業としては、感情労働に向いている従業員を見極め、適正な人員配置が求められます。また、バーンアウトしやすい従業員をみつけて、重点的なケアを行う仕組みづくりも必要です。

以下では、感情労働に向いている人の特徴について解説します。

1.自分と他人の境界線が明確な人

自分と他人の境界線がはっきりしており、顧客と適切な距離を保ちながら対応できる人は感情労働に向いているでしょう。相手のニーズに応えようとしながらも、自分にできる提供範囲内で対応していきます。

提供できる範囲を理解しないまま顧客のニーズに応えようとすると、疲弊してしまいバーンアウトに陥る可能性が高まります。

2.コミュニケーション能力が高い人

感情労働では、自分の感情に関係なく、サービスのためにふさわしい感情表現が求められます。その上で、顧客の不満を解消したり、誤解をすりあわせたりします。感情をコントロールしながら相手と交渉をするといった、高度なコミュニケーション能力が必要です。

3.オンオフの切替えができる人

仕事とプライベートの自分を切り分けられている人は、クレームや非難を受け流しやすいでしょう。クレームを受けても、「仕事での自分が否定されているだけで、本来の自分は否定されていない」と捉えられるからです。

オンオフの切替えができない状態だと、クレームを受けたときに人格を否定された気持ちになる恐れがあります。顧客対応に多大なエネルギーを向けることとなり、バーンアウトしやすくなるでしょう。

参考:感情労働が職務満足感・バーンアウトに及ぼす影響についての研究動向│目白大学心理学研究

感情労働によるバーンアウトを防ぐ企業の取組

感情労働によるバーンアウトを防ぐ企業の取組

感情労働からのバーンアウトを防ぐには、どのように取り組めばよいのでしょうか。具体的な3つの取組について解説します。

1.ストレスチェックの実施

感情労働の疲労は自覚しにくく、周囲からも認識されにくい特徴があります。そのため、気づきを促す施策として、ストレスチェックを実施するとよいでしょう。

ストレスチェックは、従業員が心身の反応や周囲のサポート状況を自己理解し、セルフケアを促進する目的で行うものです。さらに、集団分析によってストレスを抱えがちな部署の特定も可能で、具体的なメンタルヘルス施策を立てることに役立ちます。

また、感情労働からのバーンアウトは、個人の特性が影響するケースも多いといえます。そのため、ストレス反応だけでなく、ストレスからの回復力や対処パターンなどの特性を把握することも大切です。

2.相談窓口の整備

感情労働による負荷を軽減するため、相談窓口の整備を行います。
一般的には管理監督者が一次的な相談を担う役割を果たしますが、その負担が大きいと相談自体が感情労働化してしまう恐れがあります。管理監督者の負担軽減のためにも、専門の窓口への相談ができるよう体制を整えておきましょう。

また、メンタルヘルス不調の兆候がある場合、適切な専門家と連携した上で、早期に対応することが重要です。産業医や保健師、公認心理師などの専門スタッフによる相談体制を整備するとよいでしょう。

3.カスハラ対策を強化する

感情労働に関連したストレス要因として、カスハラ(カスタマーハラスメント)が挙げられます。カスハラは、顧客からの一般常識の範囲を超えた要求により、正常に働けなくなる状態を指します。カスハラ対応は多大なストレスとなるため、従業員を守る対策が必要です。

例えば、現場対応に関するマニュアルの策定や一次対応を行う管理監督者の研修など、カスハラに対処できる組織づくりを行います。
また、警察や弁護士との連携が必要なケースに迅速に対応できるよう、対応フローを決めておくとよいでしょう。

カスハラが生じても、従業員が守られる仕組みが従業員の心の安定につながります。

自覚しにくい感情労働はストレスの早期発見が重要

高レベルなサービスが求められる感情労働は、自然な感情を抑制しなくてはいけないシーンが多く、従業員にストレスがかかります。企業は感情労働の自覚しにくいストレス特徴を理解し、従業員の心の健康を守る施策を打ち出していく必要があります。

また、ストレスチェックを通じて、感情労働からバーンアウトしやすい従業員を早期発見し、重点的に対策することも重要です。メンタルヘルス不調による休職や退職を防止するため、産業医や保健師と連携しながら対応しましょう。