【メンタルヘルス不調】休職者への対応を解説!復職までの期間や給与は?
メンタルヘルス不調者が休職を希望した場合、人事や労務の担当者は就業規則に従い適切に対応する必要があります。特に休職期間や給与の支払いについては、企業によってルールが異なるため、就業規則の記載事項を事前に把握しておくことが大切です。
本記事では、休職者への対応や復職までの流れ、休職制度のメリット・デメリットや一般的な休職期間と給与の支給について解説します。
職場復帰後の再休職予防に有効なリワークプログラムも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
メンタルヘルス不調が原因で1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は、300名以上の企業で65.3%
厚生労働省の調べによると、メンタルヘルス不調が原因で1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は合計で10.6%でした。300名~499名以上の事業所では65.3%、1,000人以上の事業所では90.8%と、事業規模が大きくなるほど、その割合が高いことがわかります。
※令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況をもとに作図
またメンタルヘルス不調者の多い業界を、割合の高いものから順に5つ上げると次の通りです。
産業区分 | 連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合 |
情報通信業 | 32.0% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 25.0% |
金融業、保険業 | 19.9% |
複合サービス業 | 18.8% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 17.4% |
※令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況をもとに作表
情報通信業が最も高い割合を示しており、約3社に1社がメンタルヘルス不調による休職者がいたことになります。
私傷病休職制度とは?
私傷病休職制度とは、業務以外の病気やケガが原因で就業できなくなった従業員を休ませるための制度です。法律で定められている制度ではないため、各企業が休職制度の一環として任意で設けます。
就業規則で私傷病休職制度が定められている企業では、従業員がメンタルヘルス不調が原因で就業できなくなった場合、就業を免除して休ませることができます。
休職期間はどう決まる?給与の支給は?
休職期間と給与の支給については就業規則を確認する必要があります。
休職期間は法律で定められていないため、各企業が任意で上限を設けます。メンタルヘルス不調の症状が軽度であれば1か月程度、症状が重い場合は3か月~半年とされるのが一般的です。
休職中の給与についても各企業の任意で設定されるため、支給されない企業がある一方で、1か月~半年程の期間であれば満額が支払われ、その後、徐々に減っていく企業もあります。
また、企業から給与が支給されない場合は、支給条件を満たしていれば全国健康保険協会・健康保険組合等から傷病手当金が支給されます。
休職制度を設けるメリット
休職制度を設ける主なメリットとして、次の3つがあります。
1.離職率の低下が期待できる
2.労働力の低下を防げる
3.企業イメージの向上に繋がる
各項目について解説します。
離職率の低下が期待できる
休職制度があれば、業務から離れて休息をとることで復職できる可能性があります。いきなり退職する必要がなくなり、結果として離職率の低下が期待できます。休職者以外の従業員にとっても、何かあった場合でも安心して長く働ける職場としてエンゲージメントが高まるでしょう。
労働力の低下を防げる
休職制度が設けられていないと、メンタルヘルス不調者が無理して就業を続けてしまう可能性があります。精神的につらい状況で無理に働き続けると、パフォーマンスが低下する恐れがあります。
休職制度があることで、心身を整えてから復職する選択肢ができるため、労働力の低下を防げます。
企業イメージの向上に繋がる
休職制度を設けると、従業員が安心して働ける職場として企業イメージの向上に繋がります。採用活動の際にもメリットとなり、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。企業イメージの向上は、商品の売上アップやクライアントの獲得にもプラスになります。
休職制度を設けるデメリット
休職制度を設ける主なデメリットとして、社会保険料の負担が発生することや他の従業員にとっては業務負担が増えることがあります。
社会保険料の負担が発生する
メンタルヘルス不調者が休業した場合、健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料などの社会保険料を企業と従業員の双方が折半して支払う必要があります。従業員に対して、休職中も社会保険料が発生することを事前に説明しておきましょう。
他の従業員の業務負担が増える
従業員が休職すると、他の従業員に業務負担のしわ寄せが生じる可能性があります。または従業員が復帰するまでの代替要員を要する場合は、新しい従業員を採用するための手間やコストがかかる可能性があります。
休職までの3つのステップ
従業員が休職するまでの手続きは、次の3ステップがあります。
1.就業規則に則り休職診断書の提出
2.休職を希望する従業員との面談
3.休職の可否と期間の決定
従業員から休職の希望を受けたら、就業規則に則り必要があれば診断書を提出してもらいましょう。次に、面談の機会を設け、診断書や主治医の意見をもとに復帰の意思や休職以外の代替案の有無について話し合います。このときに、産業医の訪問を受けている事業所であれば、産業医にも面談に参加してもらい助言を受けるとよいでしょう。
面談を終えたら、休職の可否と期間を決定します。休職を決定した場合は期間を明確にすることが大切です。はじめに決めた休職期間内に復職ができなくても、就業規則の上限までは延長が可能ですが、上限に達した時に復職が困難な場合にはどういった対応になるのか、トラブルを未然に防ぐためにも、事前に休職者と認識を揃えておきましょう。
復職までの7つのステップ
休職期間を経て、従業員のメンタルヘルス不調が回復してきたら、復職を検討します。復職するまでの流れは、次の通りです。
1.就業規則に則り復職診断書の提出
2.復職に関する情報の収集
3.産業医面談
4.復職の可否についての判断
5.職場復帰支援プランの作成
6.職場復帰の決定
7.職場復帰後のフォロー
復職の判断を誤るとメンタルヘルス不調が再燃したり、精神疾患が再発したりする可能性があります。主治医の診断書だけではなく、現場の業務を理解している産業医の意見を取り入れながら慎重に判断することが、復職後の定着に繋がります。
休職前に必要な確認事項
人事労務担当者は、休職期間中の連絡手段を事前に確認する必要があります。メンタルヘルス不調で休職に入って間もない頃は電話での連絡が負担になる場合もあるため、状況に合わせてメールやチャットツールなどの手段を使い分けましょう。
休職の初期段階はメールやチャットツールで連絡をし、少しずつ回復してきた場合に電話連絡に切り替えるなど、柔軟に対応することも大切です。また、連絡の窓口を一本化しておくと連絡の重複を避けられるため、休職者が混乱せずに済むでしょう。
連絡頻度や連絡内容についても、休職に入る前に事前に共有しておくことでスムーズに連絡をとることができます。連絡手段の他にも次の事項について忘れずに確認したうえで、休職者に説明をしておきましょう。
1.休職期間
2.傷病手当金
3.社会保険料の支払い
復職支援のリワークプログラムも
職場復帰への取り組みとしてリワークプログラムの利用もおすすめです。ここでは、リワークプログラムの概要と受けられる場所について解説します。
リワークプログラムとは
リワークプログラムとは、うつ病をはじめとしたメンタルヘルス不調で休職した従業員に対して職場復帰を促すための取り組みです。休職者はリワークを実施する施設に通いながら職場復帰に必要な訓練を受けます。
期間は休職者の状態によって異なりますが、週2~5日の間隔で3か月~半年をかけて職場復帰を目指します。
リワークプログラムの主な活動内容は、生活習慣の適正化やストレスマネジメントの習得、グループワークなどです。施設によってプログラム内容も異なりますが、復職までのプランを定期的な面談で組み立てることができます。
リワークはどこで受けられる?費用負担は?
一般的には、リワークを受けられる施設は次のとおりです。
1.精神科系の医療機関
2.地域障害職業センター
3.福祉系リワーク施設
医療機関では、医師や精神保健福祉士などの医療専門職によるリワークが受けられます。健康保険制度や自立支援医療制度を利用できます。
全国47都道府県に設置されている地域障害職業センターでは、休職者と企業の担当者、主治医の3者との合意形成をしながら、職場復帰に向けたサポートを行います。費用は無料ですが、民間企業等の雇用保険適用事業所に雇用されている休職者が支援対象になるため、国、地方公共団体、行政執行法人及び特定地方独立行政法人支援対象外となります。
福祉系リワーク施設は民間のヘルケア事業者が運営しています。自治体から給付される助成金により、1か月あたり9,300円~37,200円程度の自己負担で利用可能です。
リウェルでは、エムステージグループとして培ってきた産業保健の経験と知見を活かし、企業と連携したリワーク支援サービスを展開。メンタル不調で休職や離職した方の職場復帰や再就職をサポートしています。お気軽にお問い合わせください。
メンタルヘルス不調による休職者に対して適切な対応を
現在、多くの企業がメンタルヘルス不調に伴う休職者を抱えています。人事労務の担当者は、事業所内でメンタルヘルス不調が発生した場合に備えて、就業規則に書かれている休職制度を確認しておくことが大切です。
休職制度の有無や内容は法律で定められていないため、企業毎にルールが異なります。就業規則に定められた内容を確認して、休職中にトラブルが発生しないように休職者に対して適切な対応を心がけましょう。