アブセンティーズムとプレゼンティーズムその違いと影響は?
最近ではニュースなどで、「アブセンティーズム」や「プレゼンティーズム」という言葉を聞く機会が増えてきましたが、これらはどのような意味があるのでしょうか。
本記事は、アブセンティーズムとプレゼンティーズムの初歩的な内容から、それぞれの改善法まであわせて紹介します。
アブセンティーズム・プレゼンティーズムとは
アブセンティーズムとは”目に見える”不調
アブセンティーズム(absenteeism)とは「仕事を休業/欠勤している状態」という意味の言葉です。よって、従業員等の不調が目に見える形で存在しています。
アブセンティーズムの状態を補足すると、心身等の不調により遅刻や早退する、あるいは就労自体が困難で、欠勤や休職していること。つまり、業務が行えない状態を指します。
次の項で説明するプレゼンティーズムとは異なり「欠勤・休業している」という不調の状態が可視化されています。
プレゼンティーズム、アブセンティーズムを招く原因の例
- メンタル面の不調(不眠や鬱)
- 胃腸や呼吸器、目の不調
- 頭痛や腰痛、肩こり
- アレルギー(花粉症など)や感染症(風邪など)
- 月経・月経前症候群(PMS)
- 二日酔い 等
プレゼンティーズムとは”目に見えない”不調
プレゼンティーズム(presenteeism)は「疾病出勤」という意味の単語であり、言い換えると「会社に出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況」となります。
出勤しているとはいえ、心身に何らかの不調が発生している状態ですので、本来の業務パフォーマンスを発揮することができず、生産性が低下しています。
このような理由で、企業からは「可視化されづらい損失」とも捉えられています。
プレゼンティーズムは個人・企業それぞれの大きな課題
プレゼンティーズムが企業に与える影響
上の図は、厚生労働省が作成した『コラボヘルスガイドライン』から引用した図で、アメリカのとある企業における健康関連のコストの全体構造をしめしたものです。
図を見ると「医療費」や「アブセンティーズム」よりも「プレゼンティーズム」に関するコスト割合がずっと大きいことが分かります。
プレゼンティーズムは個人だけでなく企業にとっても大きな課題となっていますので、適切な対応が必要となるのです。
個人・企業の生産性に影響するプレゼンティーズム
続いて、国内のケースです。
上の図は、生産性の測定方法が共通する日本国内3企業の健康関連総コストを推計し、その結果を表しています。
健康関連総コストの中でアブセンティーズムは4.4%、医療費は15.7%です。対してプレゼンティーズムによるものは77.9%と約8割を占めているのです。
3企業それぞれの事例では、企業における健康関連の総コストにおいて、プレゼンティーズムが最大の要因となっていることが共通しており、企業の生産性に大きな影響を与えることが分かります。
よって、生産性向上等の観点から、近年はプレゼンティーズムの課題解決を目指した活動を行うことが重要視されています。
健康経営とプレゼンティーズム
プレゼンティーズムの改善に必要な企業の取り組みは
前述したように、アブセンティーズムおよびプレゼンティーズムがもたらす影響は大きいため、働く人と企業がそれぞれ改善に向けて取り組みをしていかなければならないと考えられています。
企業はまず、社内の勤務制度や休暇制度、産業保健体制等を見直し、健康経営を実現していくことが効果的でしょう。
健康経営を実践するメリットは、アブセンティーズム・プレゼンティーズムで生じうる企業リスクの回避にもつながることです。例えば、医療費や保健費などの健康関連コストの低減をはじめ、従業員のミス減らすこと・集中力をアップさせるなど作業効率の向上も期待できるでしょう。
また、従業員の健康確保を通じて休職・離職のリスクを低下させることや、業績・ステークホルダーへも好ましい影響を与えることと考えられています。
健康経営と業績の関係
上の図は、アメリカの優良健康経営表彰企業に対して1万ドルを投資した場合と、米国の証券取引所に上場した代表的な500銘柄で構成されるS&P500社平均に1万ドルを投資した場合との、将来における仮想的な投資成果を比較した仮想的な計算例を表したものです。
1999年時点ではそれぞれ1万ドルだった投資が、13年後の2012年には有料健康経営表彰企業は1万7,871ドルあまりになっているのに対し、S&P500社平均は9,923ドルあまりと、優良健康経営表彰企業は大企業平均を上回る業績を上げていることが分かります。
アブセンティーズム・プレゼンティーズムの概要とその対応について紹介しました。プレゼンティーズム等への対策は、従業員の健康確保をはじめ、生産性の向上にも期待できますので、企業として改善に取り組むことが大切です。
産業医等の専門スタッフと適切に連携し、取り組んでみましょう。