休職と復職を繰り返してしまう…企業に求められている復職支援とは
コロナ禍による働き方の変化により、メンタルヘルス不調や休職に関するニュースを目にする機会も増えました。同時に、企業においては休職・復職者対応が課題となっているケースも多いことが考えられます。
本記事では、復職に関する基本的対応法と、再休職を防ぐために企業担当者が取り組めることをピックアップして紹介します。
休職~復職までの流れと、復職にまつわる関係者
休職・復職にまつわる関係者・担当者
従業員が休職した際、復職に至るまでは、会社と休職者の間で何度か面談が設けられます。
復職判断に関わることになるのは、主に次の5者です。
1.休職者本人:復職にあたっては、休職者本人の「復職したい」という意思が必要になります。
2.主治医:休職者からの復職希望を受けて「復職可能かどうか」という診断を行ないます。
3.休職者の上司・管理者:休職者(部下)から復職希望があった場合、休職中の連絡窓口を務めることもあります。
4.人事担当者:原則として、休職中の連絡窓口から復職のフォローアップまでを担当します。
5.産業医:会社からの依頼を受けて休職者と面談し、復職の可否について意見します。
私傷病休暇で休職した社員の復職までの流れ
上図は、厚生労働省の「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」において図式化されたメンタルヘルス不調による休職者の復職までの流れです。
メンタルヘルス不調者が休職した場合、主にこの5つのステップを経て職場に復帰します。
休職から職場復帰までの主な流れ
1.病気休業開始及び休業中のケア
2.主治医による職場復帰可能の判断
3.職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
4.最終的な職場復帰の決定
ー職場復帰ー
5. 職場復帰後のフォローアップ
以下にて、一つずつ確認しておきましょう。
1.病気休業開始及び休業中のケア ~休職中の過ごし方~
医師の診断書を上司に提出し、休職がはじまります。
診断書を受け取った上司は、人事担当者等にその旨を連絡します。また、担当者は休業者に対して職場復帰までの流れや、各種の事務手続きについても案内が必要となります。
●休職開始に向けて行なう説明等
・傷病手当金などの経済的な保障
・不安、悩みの相談先の紹介
・公的または民間の職場復帰支援サービス
・休業の最長(保障)期間 など
また、休職者の病状や体調、その他に会社の方針にもよりますが、休職中の前期・後期として次のような例が考えられます。
●休職中の過ごし方:休職前期
休職後、徐々に不眠や食欲減退が緩和されていくリラックス期間であり、医療機関から薬を処方されている場合は、服用しつつ生活を整えていきます。
会社からの連絡が心理的な負担になりやすい時期ともされているため、社用の携帯電話やパソコンは利用方が良いでしょう。また、リラックス期間とはいえ、旅行に行くことや人と会う等の積極的な楽しみは控え、休養に努めることが重要です。
読書等の受動的な楽しみを見つけ、徐々に復職への意欲を取り戻していくことが大切になります。
連絡頻度は、2ヶ月に1回~月に1回を目安に、休職者の状態に合わせて決めます。1ヶ月程で回復を感じられる場合もあれば、半年以上かかることもあります。
●休職中の過ごし方:休職後期
休職後期では、人に会うことや、買い物に出かけたりすることが苦でなくなる期間とも言われています。また、休職中は、就寝時間と起床時間、食事の時間や回数等について生活記録表に記入することが一般的です。
このようにして、休職以前のような日常生活が送れるようになってきたら、リワークへ通所する等、復職へ向けたリハビリをスタートします。
リワークプログラムの利用や職場復帰を見据えたリハビリは、この時期から徐々に始めると良いでしょう。
リワークへの通所は今後の通勤の準備に相当し、リワーク施設における事務作業等では、職場復帰に向けた業務のトレーニングになります。
2.主治医による職場復帰可能の判断
休職者が復職したい旨を主治医に伝えた場合、主治医は休職者が復職可能な状態かどうかを判断します。
ちなみに、主治医は患者である休職者寄りの診断を下しやすいとも言われています。また、主治医は職場環境や業務内容について熟知しているわけではありません。あくまで「日常生活が可能か否か」という点で診断します。
よって、職場における不調の原因が完全にクリアにされているかどうかを主治医が判断することは非常に難しく、「軽微な作業なら可」といった曖昧な診断を下すこともあります。
ですので、企業の担当者としては、産業医に相談し、復職の可否について決めましょう。
3.職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
続いて、職場復帰に向けた準備についてです。
メンタルヘルス不調の場合、日常生活を営める程度に症状が改善した状態に復調している、つまり寛解(※)しているかどうかがひとつのポイントになります。
※症状が完全に消失し精神的に安定した状態。「寛解」は「完治」では、ありません。仮に休職者の主治医が「復帰可能」という診断をした後でも、状態が悪くなってしまうこともあります。
そこでリワークに向けては、一つひとつステップを確認し、職場復帰支援プランを作成しながら進めていくことが大切です。
なお、職場復帰支援プランに盛り込む内容は以下とされています。
1:職場復帰日
2:管理監督者による就業上の配慮
3:人事労務管理上の対応等
4:産業医等による医学的見地からみた意見
5:フォローアップ
6:その他
4.職場復帰
職場復帰支援プランをもとに取組み、事業者が職場復帰の決定をします。
そのために、まずは労働者の状態や疾患の再発有無について最終確認を行ないます。
そして、就業上の配慮のため産業医等に「職場復帰に関する意見書」等の作成をしてもらい、その上で事業者は職場復帰の決定をします。
なお、就業上の配慮の内容は労働者に対して知らせ、職場復帰に関する会社の対応や就業上の配慮について、労働者を通じて主治医に的確に伝わるようにしてください。
5.職場復帰後のフォローアップ
従業員が職場復帰したら、上司・管理者をはじめ、産業医等の専門スタッフが連携し、フォローアップに努めることが必要です。
その上で、場合によっては職場復帰支援プランを見直す等して、実情に即した活動にしていきましょう。なお、職場復帰後の配慮等については、厚生労働省の「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に詳しく記載されていますので、以下についても確認しておきましょう。
⑴疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認:疾患の再燃・再発についての、早期の気づきと迅速な対応が不可欠です。
⑵勤務状況及び業務遂行能力の評価:労働者の意見だけでなく、管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行います。
⑶職場復帰支援プランの実施状況の確認:職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認します。
⑷治療状況の確認:通院状況、病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞きます。
⑸職場復帰支援プランの評価と見直し:さまざまな視点から評価を行い、問題が生じている場合は、関係者間で連携しながら、職場復帰支援プランの内容の変更を検討します。
⑹職場環境等の改善等:職場復帰する労働者がよりストレスを感じることの少ない職場づくりをめざして、作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境等の評価と改善を検討します。
⑺管理監督者、同僚等の配慮:職場復帰をする労働者を受け入れる職場の管理監督者や同僚等に、過度の負担がかかることのないよう配慮します。
出典:厚生労働省「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」