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当事者になって感じたリワークの必要性。支援員として自分の経験を誰かの希望へ

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株式会社リウェルは、エムステージグループとして培ってきた産業保健の知見を基に、メンタルヘルス不調者の復職支援サービスを提供しています。その中核となる「リウェルリワークセンター」では、うつ病や適応障害などを理由に休職や離職した方々が、再び職場に戻り、自分らしく働けるようサポートしています。  今回は、今年2月にオープンしたリウェル大宮センターで支援員を務める矢田さんに、自身の経験から感じるリワーク(職場復帰支援)の必要性や、支援への思いについてお話を伺いました。

株式会社リウェル
リウェル大宮センター 支援員 矢田さん
鉄鋼会社で技術職としての業務を経て、障害者総合支援法に基づいた就労系福祉サービスの一つ、就労継続支援B型施設で福祉職として勤務。2023年に株式会社リウェルに入社。支援員としてメンタルヘルス不調で休職・離職した方に寄り添い職場復帰に向けたリワーク支援に従事。

――本日はよろしくお願いします! まず、現在支援員として働く矢田さんですが、新卒から支援員として働かれていたのでしょうか

新卒では全く異なる職種で働いていました。理系の大学院を修了後、鉄鋼会社に入社し、技術職として約7年間勤めていました。主に工場内の電気設備の管理を担当し、給電設備や電気機器、機械の電気系統全般に携わっていました。工場が安定して稼働するために不可欠な仕事で、日々責任感を持って取り組んでいました。

――技術職から支援員へ転身したのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか

実は、私自身がメンタルヘルス不調を経験し、リワークを利用したことが支援員を志したきっかけでした。
当時、メンタル不調に陥った私はリワークに通うなかで、同じ境遇の仲間と出会い、支え合いながら自分の病気と向き合うことができました。その経験から、「リワークって本当に素晴らしい仕組みだ」と心から思いました。そして、自分が助けられたように、次は自分が同じように苦しんでいる人たちの力になりたいという思いが芽生え、支援員をめざすようになりました。

――それが矢田さんが支援員になったルーツなのですね。「リワーク」という言葉にまだ馴染みのない方も多いと思います。改めてリワークについておしえてください

リワークは「Return to Work」の略で、職場復帰をめざすためのプログラム全般を指します。特に、うつ病や適応障害などの理由で休職している方を対象に、再休職を防ぎつつ、職場に定着できるよう支援するものです。

――その中で、支援員である矢田さんは具体的にどのような業務をされているのでしょうか 

私たち支援員には、主に3つの役割があります。

1つ目は、利用者の方一人ひとりに合わせた支援プランの作成です。約100種類あるプログラムのなかから、その方の状態やニーズに合った内容を組み合わせ、オーダーメイドでプランを作成します。このプランを作るために、面談や日々のコミュニケーションを丁寧に行い、利用者さんの状況を深く理解することを大切にしています。  

2つ目は、プログラムの実施・改善です。プログラムを通して利用者の方々と向き合い、復職に向けたトレーニングを行います。ここでは、知識の提供に留まらず、職場で役立つ実践的なスキルの習得を意識してお伝えしています。また、実施後の振り返りも徹底し、プログラムの改善を重ねています。

3つ目は、利用者さんが復職をめざす企業との連携です。職場環境や業務内容を把握するために企業にヒアリングを行い、復職後の再発防止策を企業と共に検討します。利用者さんと職場の双方が前向きに取り組めるよう、橋渡しの役割も担っています。

――様々なリワークセンターがあるなかでのリウェルの強みをおしえてください

リウェルの強みは、プログラムの種類が豊富であることです。利用者さんそれぞれに合う・合わないがあるため、選択肢が多いことで、その人に最適なプログラムを見つけやすいのが大きな魅力です。
そしてもう一つは、「利用者ファースト」の考え方が組織全体に根付いている点です。利用者さんにとって最善の選択をすることを全員が基本姿勢として持ち、担当者だけでなくチーム全員で話し合う風土があります。たとえ迷うことがあっても、1人で抱え込むのではなく、皆で意見を出し合いながら「利用者さんにとって最も良い選択肢」を探していく。この協力的な姿勢がリウェルの強みだと感じます。

――現場にいるからこそ感じる課題や、今後重要だと考えていることをおしえてください

現場にいて感じる大きな課題は、「企業側のメンタルヘルスへの意識の低さ」です。利用者さんがリワークでスキルや心のバランスを取り戻しても、復職先の職場環境が整っていなければ、再び壁に直面する可能性があります。だからこそ、企業が社員のメンタルヘルスを重要視し、支援体制を整えることが不可欠です。  
私は、「休職は成長のチャンス」だと考えています。休職期間中に自分を見つめ直し、新しいスキルを身につけることで、復職後には以前よりも健やかで充実した働き方が可能になります。こうした休職のポジティブな側面を広めていくことが、これから更に重要だと考えています。

――支援員として、日々の業務で心がけていることはありますか

大切にしているのは「利用者さん一人ひとりの背景を理解すること」です。それぞれ異なる課題を抱えているので、思い込みを捨て、柔軟に対応するよう個別化支援を意識しています。日々の観察や会話を通じて、些細な変化にも気づけるよう努めています。  また、利用者さんの価値観を否定しないことも重要です。その方が持つ目標やペースを尊重し、寄り添いながら支援を進めています。

そして、もう一つ心がけているのは「職場で本当に役立つ支援」を最優先に考えてサポートすることです。利用者さんが実際に現場で活かせる実践的な内容を提供することこそ、リワークの真の価値だと考えています。復職後の人生を見据え、利用者さん一人ひとりに寄り添ったサポートをする。これも支援員として私が日々意識していることです。

――当事者になった経験があるからこそ生まれる矢田さんの「強み」や「やりがい」をおしえてください

私の強みは、プログラムを利用者さんに合わせて柔軟に改善できることだと思っています。既存のプログラムを提供するだけでなく、「どうすればもっと良くなるのか」を常に考えています。この「改善し続ける姿勢」は、私自身がリワークを経験し「プログラムの重要性」を身をもって実感したからこそ培われたものだと感じています。

そして、支援員としてのやりがいは、プログラムや面談を通じて、利用者さんの成長を実感できる瞬間です。「この部分が変われた」「ここが学びになった」といった言葉を聞くたびに、その変化がより良い人生へと繋がっていくと感じています。特に、復職が決まった報告を受けた時は、何にも代えがたい達成感に包まれます。

――さいごに、今後の目標をおしえてください

支援の現場にいると、「もっと早くリワークを利用していれば……」ともどかしさを感じる場面があります。企業のメンタルヘルスに対する意識がまだ低い状況や、リワークの重要性が十分に伝わっていない現実があるからです。そのため私は、将来的にリワークが「特別なもの」ではなく、「復職するならまず利用するもの」として社会に根付く仕組みを作ることが目標です。 
そして、どんな状況で来られたとしても「ここなら行きたい」「来て良かった」と思える場所であり続けることです。そのために、自分自身でアイデアを考えたり、スタッフ全員で意見を出し合いながら、センターをより良いものにしていきたいと考えています。
リウェルが掲げる「再休職率0%」という目標にむかい、引き続き支援に全力を注いでいきたいと思います。

――支援員として、自らの経験を活かしこれからも利用者さんと共に成長し続ける。本日は貴重なお話ありがとうございました。