【社労士監修】休職期間はどう決まる?休職中の給料・手当・手続き10の疑問
休職とは、業務外でのケガや病気(私傷病)によって、一定期間仕事を休んで療養が必要な場合に、その会社が労働義務を免除するしくみです。
はじめて休職者対応する際は、人事・労務担当者も迷うことが多いでしょう。
いざ休職対象者が発生したときに慌てないように、事前に取るべき対策、決めるべきルールを把握しておきましょう。
休職にまつわる「よくある10の疑問」について、社会保険労務士の舘野聡子先生へ解説していただきしました!
Q1:休職の期間はどうやって決まるの?
A.休職の期間は就業規則に定められた期間になります。
休職制度については必ず定めなければならないと法律で決められているものではありませんので、職場ごとに上限が設定されています。
割合的に、就業年数によって休職期間に差を設けている企業が多いようですが、中には休職制度がない職場や、試用期間や勤続が1年未満の社員は休職制度の対象外の職場もあります。
また、休職期間は症状が軽度であれば1か月程度、症状が重い場合には3か月~半年間が一般的といわれています。
Q2:休職期間は延長できるの?
A.状況と照らし合わせ、休職の期間を延長することも可能。
多くの場合、主治医の診断書等で必要とされた期間を休職期間とするのですが、復職までにもう少し療養が必要ということがわかれば、就業規則の上限までは延長できる仕組みになっています。
Q3:休職期間が満了になったら退職になるの?
A.退職になるかどうかは就業規則の定めによる。
業務上の傷病とは異なり、私的な病気やケガを理由とする休職の場合には、法的な雇用保障はありません。
休職期間が満了しても復職できないときは、退職とする場合と解雇になる場合があります。
Q4:休職したら会社から手当が出るの?
A.給与が支給されない場合は、加入している健康保険から「傷病手当金」を申請すれば支給される。
休職期間中、給与が一定期間支給される会社もありますが、多くの場合無給となっています。
傷病手当金は、以下の条件をすべて満たすときに支給されます。
①業務外の病気やケガのための休業であること
②療養のための仕事に就くことができないこと
③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
④休業した期間に給与の支払いがないこと
Q5:休職中の給与(給料)はどうなるの?
A.休職した場合の給与については、これも就業規則にどのように定められているかによって変わってくる。
一切支給されない会社もありますし、一定期間(1ヶ月〜半年くらい)は満額支払われ、その後徐々に減っていき、最終的に無給になるという会社もあります。
自社の就業規則を確認しておきましょう。
Q6:休職に入るときの手続きは?
A.休職に入る際の手続きは、まず医師からの診断書をもらうことからはじまる。
休職に入るときの手続きは、多くの会社で、
・「私傷病により、本人が申出」
・「欠勤が〇日以上継続」
・「医師の診断書で休職の必要性あり」
を条件にしています。
中には、本人が体調不良があきらかであるにも関わらず休職を拒む場合に、休職を命ずることができるようにしている会社もあります。
具体的な手続きとしては、以下のようなステップになります。
①診断書・休職願いを確認し、休職事由に該当するかを判断する
②休職者についての情報を上司から収集する
③休職の原因が労災に該当するかどうかをチェックする
④休職者に対して書面を交付し、休職可能期間、職場復帰の際の申し出の順序と必要書類などの内容を伝える
Q7:休職と「欠勤」の違いは?
A.休職は、私傷病により一定の期間仕事を休んで療養が必要な場合に、その会社が労働義務を免除するしくみ。
休職となっている理由が消滅すれば、復帰することが前提です。
欠勤は私傷病が原因のこともありますが、労働義務がある日に仕事に就かなかったことを表しており、労働義務が免除されてはいません。
欠勤が一定期間連続した場合に休職に入る仕組みになっている会社が多いので、混乱しやすい点です。
Q8:休職中の社員と会社の連絡方法は?
A.手段の定めは無いが、休職に入る前に、連絡方法について必ず話し合っておくこと。
休職中の社員との連絡方法は、電話、メール、手紙、など、どのようなものでも構いませんが、「必要な時に必ず連絡がつく」「比較的負担が少ない」方法を休職に入る前に話し合って決めておくことをおすすめします。
特に一人暮らしの社員の場合は実家で療養することもありますので、その場合の連絡先も確保しておきましょう。
また、会社の携帯やパソコンも休職期間中には使えないようにしたほうが仕事から離れてしっかり療養できますので、その場合は個人のメールアドレスや携帯番号を確認しておく必要があります。
Q9:休職中の社会保険の扱いはどうなるの?
A.休職中も社会保険料は免除にはならない。
復職できる可能性があるからこその休職制度ですので、休職中も社会保険(健康保険、厚生年金)の被保険者資格は継続し、保険料も発生します。
会社も、社員もそれぞれの負担分を納付する必要があります。
社員の社会保険料は、ほとんどの場合には月々の給与から控除して徴収されます。
しかし、休職中に給与が支給されなかった場合、会社は社員の給与から天引きできないため、直接社員から保険料を徴収する必要があります。
Q10:休職から復帰する際の手続きは?
A.復職の際は、医師からの意見をもらうことが第一。
休職制度は、休職の事由が消滅すれば復帰することが前提の制度です。
私傷病の療養のための休職の場合、仕事ができる状態になれば休職の事由が消滅し、職場復帰することになります。
休職の事由が消滅したかどうかは、本人が主治医の診断書などを提出するほか、産業医や会社の指定する医師の面談で会社が判断します。
復職が可能と判断された場合は、一定期間勤務時間を短縮する時短勤務や残業の制限などの就業制限を実施しながら少しずつ職場に慣れていくようにする職場が一般的です。
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以上、休職にまつわる「よくある10の疑問」についてお答えしました。
いざ休職者が発生したときに慌てないように、まずは、休職・復職に関する就業規則、ルールを確認し、もし整備されていない場合は、すぐに取り掛かりましょう。
監修:舘野聡子
株式会社ISOCIA 代表取締役/特定社会保険労務士/シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/メンタルヘルス法務主任者
民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後「ハラスメント対策」中心のコンサル会社にて電話相談および問題解決のためのコンサルティング、研修業務に従事。産業医業務を行う企業で、予防のためのメンタルヘルス対策とメンタル疾患の人へのカウンセリングに従事。2015年に社労士として独立開業、株式会社エムステージでは産業医紹介事業の立ち上げにかかわる。