快適な睡眠とメンタルヘルスの関連性
日本人の「睡眠」に関する現状
日本人の平均睡眠時間は7時間22分
OECD(経済協力開発機構)の調査「Gender Date Portal 2019」によると、アメリカの平均睡眠時間は8時間48分。それに対して、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、1時間以上も短いことが分かっています。
これは、OECDに加盟する30か国の中でも最下位という睡眠時間の短さであり、睡眠によって十分に休養がとれていない人の割合についても、2009年以降は有意に増加していることが分かっているのです。
また、厚生労働省の発表した「令和元年 国民健康・栄養調査」では、日本人の1日の睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性で32.7%。女性では36.2%となっています。
そして、睡眠が6時間未満の方も多く、男性で37.5%、女性では40.6%の人が比較的短い睡眠時間ということが分かっています。
睡眠の「質」と「役割」について
続いて睡眠の質についてです。先に取り上げた「令和元年 国民健康・栄養調査」では、睡眠の「質」に関する調査も行っています。
その中で男女とも最も多かった回答が「日中、眠気を感じた」というものであり、男性の32.3%、女性の36.9%となっています。
その他にも「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」という回答も多く、睡眠の質が高くない現状があります。
また、睡眠には休息・休養をはじめ、生活を送るうえで欠かせない重要な活動であり、その代表的なものが以下のような役割です。
▼睡眠の役割
・脳の休息:判断能力や記憶力が向上する
・老化防止:肌や骨の老化を防ぎ傷の自然治癒を促進する
・病気の治療と予防:免疫力が向上する
・日中の活動の準備:1日の記憶の整理
・老廃物の排除:がんや動脈硬化、認知症の予防の役割があるといわれている
睡眠の種類「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」
睡眠には2つの種類があるとされており、その一つが「レム睡眠」です。レム睡眠は浅い睡眠であり、夢を見ることが多い。そして、レム睡眠中は身体が休めている状態です。
一方の「ノンレム睡眠」は深い眠りと言われており、脳が休めているため、リラックスしている状態です。
この2つの睡眠には訪れるリズムがあり、約90分毎にレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返されるといわれています。
また、すっきりと目覚めるためにはレム睡眠時に起きることがポイントとなっていることから、睡眠時間は90分の倍数が良いといわれている理由です。
よって、すっきりとした目覚めのためには、6時間(360分)・7時間半(450分)睡眠が適していると考えられます。
そして、入眠にはメラトニンという睡眠ホルモンが深くかかわっています。メラトニンについては後述しますので、確認しておきましょう。
睡眠の深いかかわりがある「メラトニン」とは
メラトニンは、「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、自然な眠りを誘う作用があります。
目覚めてから15~16時間ほど経過すると、脳の松果体と呼ばれる器官からメラトニンが分泌されることで、眠気が訪れます。
つまり、朝7時に起床する人は22時から23時頃に眠気がやってくるということになります。
また、メラトニンは太陽などの光を浴びることで分泌が抑制され、目が覚める仕組みがあります。よって、就寝前にテレビを視聴することやスマートフォンを操作することは、画面から発せられる光によってメラトニンが抑制されてしまうといわれています。
そのため、眠る時間が近づいている場合にはスマートフォンの使用等は避けることが推奨されているのです。
このように、決まった時間に毎朝目覚めることは、その日の正しい就寝時間にもつながりますし、規則正しい生活を送るために重要となります。
快適な睡眠を実現するためのポイント①
厚生労働省の公表している「健康づくりのための睡眠指針」では、快適な睡眠を実現するための様々な取り組みについて触れられています。
快適な睡眠は、体調維持のために重要であり、生産性の向上や労働災害の防止につながりますし、生活習慣病の予防になります。また、精神面にも影響があるとされており、メンタルヘルス不調の対策にも効果があるものです。
快適な睡眠のためには、前述した就寝前の光を避けることのほかにもあります。例えば、睡眠前はカフェインを摂取しないことや、アルコール類を飲まないことも挙げられています。
カフェインの作用は摂取後3時間ほど持続するといわれています。また、成分による利尿作用は快適な睡眠の妨げとなります。
カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶やエナジードリンク等にも含有されていることがありますので注意しましょう。
▼健康づくりのための睡眠指針における「睡眠12箇条」
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
出典:厚生労働省「「健康づくりのための睡眠指針」
快適な睡眠を実現するためのポイント②
快適な睡眠のためには、睡眠に適した環境をつくることも欠かせません。
具体的には、自分に合った寝具(ベッド、布団、枕など)を選ぶことをはじめ、照明器具・カーテン等で静かさや暗さを調整し、リラックスできる空間を目指します。
また、眠れない時の対応としては、無理に眠ろうと意気込むのは逆効果と言われています。
やはり、ベッドや布団の中でスマートフォンを操作等することは避け、一度、床を離れることが良いとされています。
そして、自然な眠気が訪れたら寝床に就くようにしましょう。
そして、注意する必要があることは、「連日、眠ることができない」といった状況になった場合です。
上手く眠れなくなってしまった、あるいは眠っても熟睡感がなく、日中に強烈な眠気があるような場合は、なんらかの病気であることも考えられますので、医療機関を受診するなど、専門家へ相談するようにしてください。