「コーピング」とは?効果と実践法を紹介
ストレス対策には、厚生労働省の提唱する「4つのケア」をはじめ、個人で取り組むものから組織で取り組む内容まで、様々なタイプのものがあります。
その中でも、近年では「コーピング」と呼ばれる対処法にも注目が集まっています。
本記事では「コーピング」の概要と実践法、効果等について紹介します。
ストレスとその対処法
仕事でストレスを感じている人の割合は53.3%
厚生労働省が実施した「労働安全衛生調査(令和3年)」の調査結果によると、「仕事や職業生活に強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある」労働者の割合は53.3%と、半数以上の働く人がストレスを感じていることが分かっています。
令和2年の同調査では54.2%でしたが、依然として高い数値であることから、適切なストレス対策が求められているところです。
また、メンタルヘルス不調を理由に休職(休業)を余儀なくされてしまう労働者の数も多く、令和3年の調査では、「メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所」の割合は10.1%とされており、前年の調査(9.2%)より高い数値となっています。
このように、仕事とストレスには関連性があることが考えられるため、健康的に働くためには、ストレスと上手に付き合っていくことが大切になります。
メンタルヘルス不調対策の基礎は「4つのケア」
メンタルヘルス不調対策として基軸となるものが「4つのケア」と呼ばれるもので、厚生労働省の指針「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にて、その内容が示されています。
4つのケアは「セルフケア」「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフによるケア」「事業場外資源によるケア」の項目に分けられ、それぞれの担当者と取り組む活動が定められます。
・セルフケア:労働者
・ラインケア:管理監督者
・事業場内産業保健スタッフによるケア:産業医、保健師等
・事業場外資源によるケア;外部相談機関、専門家等
4つのケアの詳細とその取り組み内容については「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にて解説されていますので、関係者の方は必ずチェックしておきましょう。
コーピングとは?
「ストレス」という言葉にはマイナスの印象が付いて回りますが、ストレスのすべてが悪いものというわけではないとされています。
その理由には、仕事を行う上で程よい緊張感は大切であり、達成感や成果を感じるためにも、適度なストレスは必要であると考えられているからです。
よって、ストレスと上手に付き合いつつ業務に当たれることがベストといえるでしょう。
前述した「4つのケア」の他、ストレス対策として近年注目を集めているのが「コーピング」というものです。
コーピングとはストレスの対処法のことであり、主に「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の2種類があります。
以下でそれぞれの内容とその例について紹介いたします。
・問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングは、ストレッサー(ストレス要因)そのものに働きかけて解決を目指すストレス対策です。
問題焦点型コーピングの例として、対人関係がストレス要因になっている場合には、その人物に対し直接働きかけることで対処を行います。
また、人間関係に限らず、職場環境がストレス要因となるケースも考えられます。具体的には、職場の室温が適切でないことや、騒音が大きいといった場合です。
こうしたケースでは、職場環境の改善が必要になりますので、産業医による職場巡視等の機会を活用することが求められます。
・情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングは、前述した問題焦点型コーピングとは異なり、ストレッサーに対する自身の考え方や感じ方を変えることを目指したストレス対処法です。
情動焦点型コーピングの例としては、言われた言葉の受け取り方を変えることも挙げられます。例えば、上司から注意や指導されたような場合でも「自分はだめなんだ」と落ち込まず「期待してくれている」という風に捉え、考え方を変えていきます。
コーピングの効果と実践方法
コーピングを習得することは、個人だけでなく企業・組織にも良い影響があります。
働く人が適切なストレス対処法を身に付けることで、メンタルヘルス不調の回避が見込めることや、生産性の向上などにも期待が出来ます。
コーピングの実践方法のひとつに、リストを活用したものがあります。これは、自分に適したストレス解消方法を羅列、リストとして作成し、実際にストレスを感じたときに取る行動として記載します。
また、リストを作成する際にはなるべく具体的に記載することを心掛けましょう。
例えば、単に「自転車に乗る」と記入するのではなく「○○市までサイクリングし、景色を見る」といったように書くことが大切になります。
コーピングを実践するポイント
最後に、コーピングを実践する際の注意点についてです。
コーピングには前述した主に2つの種類がありますが、実践の際には注意点があり、それは「一人で行わない」こととされています。
ストレスを感じている当事者が一人きりでコーピングに取り組むことはリスクが伴い、さらなるメンタルヘルス不調を引き起こしてしまう恐れがあります。
よって、同僚や上司、人事担当者、産業医、リワーク施設の担当者など、信頼できる人の協力を得ながら取り組むようにしましょう。
コーピングはストレス対処法であり、深刻なメンタルヘルス不調を抱えている場合には、産業医・保健師や医療機関などをはじめ、場合によっては外部の専門家へ相談するようにしてください。