「生活記録表」とは?記入項目と復職判断時の重要性
休職中から復職時まで重要な役割を果たす「生活記録表」
メンタルヘルス不調による休職者の発生状況
厚生労働省が毎年発表している「労働安全衛生調査」の最新版(令和3年版)によると、1年間でメンタルヘルス不調を理由とした1か月以上の休業者、もしくは退職した労働者がいた事業場の割合は10.1%と、およそ1割の事業場にて休業者が発生している状況です。
また、この数字については令和2年の調査では9.2%であったことと比べると、約1ポイントの増加となっています。
そして、メンタルヘルス不調を理由として退職してしまう従業員も増加傾向にあるため、企業等では休業者への対応が課題となっていることが予想されます。
メンタルヘルス不調による休業から退職を防ぐためには、復職に関する適切な判断および対応に取り組むことが欠かせませんが、企業の努力だけでなく労働者による活動も必要となり、その一つが「生活記録表」の作成です。
本記事では、生活記録表の記入事項や重要性等について紹介しています。
生活記録表とは?記入項目と目的
生活記録表とは、一般的に「一日の生活に関する記録」を記入するためのリストのようなものであり、休職期間中においては毎日の記入が推奨されています。
生活記録表は列車の時刻表のような体裁であることが多く、30分毎に区切られたシートを記入するようになっています。
生活記録表に記載する内容は、その日の「体調」「疲労度・コンディション」をはじめ、タイムシートには「起床・就寝」「食事」「行ったこと」といった項目を記載していきます。
また、備考欄等を活用して一日の振り返りを行うこともあります。
生活記録表を活用する目的は大きく分けて2つあります。その一つが、継続的な記入によって、労働者が自身の健康状態の変化や影響を受けやすい出来事を認識するというものです。
もう一点は、事業主や産業医等の専門スタッフへ提出することで、休業している従業員の状態を知るための情報源になっており、復職判断におけるひとつの指標として活用されることが多いのです。
生活記録表に記入する内容
生活記録表によっては疲労度や気分について「○・△・×」といったように、指数を記入するものもあります。
また、生活記録表には、前述した一日のタイムスケジュールの他、もう少し踏み込んで具体的な内容を記入することもおすすめです。
例えば、以下のような項目について記入してみましょう。
▼疲労度
・その日の疲れ具合
・疲れを感じる理由は何だったか 等
▼食事
・食事をとった時間帯
・どんな物を食べたか 等
▼気分
・その日の気分とその波はどうだったか
・気分に影響した出来事は何だったか 等
▼睡眠
・睡眠の質はどうだったか
・就寝の時間に変化はなかったか 等
なお、こうした健康の状態に関する事柄以外にも、復職支援プログラムを受けている場合には、「プログラムで取り組んだこと」などの内容も記載すると良いでしょう。
復職判断における生活記録表の重要性
生活記録表の記入が重要視される背景には、前述したようにその内容が復職判断時の一助とされているほか、再休職のリスクを低下させる効果にも期待されているからです。
もちろん、休職期間中は生活記録表の記入だけではなく、適切な復職支援プログラム等を受けることが大切になりますが、記録表の記入はそのプログラムの軸ともなる活動とされています。
また、継続的な記入とあわせ、日ごろの活動を振り返るためにも、生活記録表は毎日記入することが推奨されています。よって、たとえ体調等がすぐれなかった日であっても記入することが望ましいものですが、決して無理のない範囲で取り組んでいきましょう。
復職判断における生活記録表の役割
復職の判断を行う際、生活記録表の情報が大切な役割を果たすことが考えられます。
休業している従業員の復職可否およびその判断については、医師等の専門家から意見をもらうなど個別具体的な判断が求められています。
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」には、復職に関する判断基準の例が挙げられています。
いくつかの項目については、生活記録表の記入内容も判断の参考とされることがあるため、復職時の判断材料としても大きな意味を持つものになるでしょう。
●復職における判断基準の例
・労働者が十分な意欲を示している
・通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
・決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
・業務に必要な作業ができる
・作業による疲労が翌日までに十分回復する
・適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
・業務遂行に必要な注意力、集中力が回復している など
出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
「生活記録表」の概要とその重要性について紹介しました。休職時から復職のタイミングといったさまざまな場面で生活記録表は大切なものになりますので、適切に活用していきましょう。